マンション売却の手元に残る金額はいくら?計算法【2026年版】
査定額を聞いて、まず頭に浮かぶのは「この金額で売れたら、結局いくら残るんだろう」ではないでしょうか。手元に入るのは査定額そのままではありません。仲介手数料などの諸費用、住宅ローンの残債、そして利益が出たときの税金——この3つを引いた残りが、住み替えや次の生活に使えるお金です。順番に引いていけば、査定を聞いた段階で概算はつかめます。
手取り額は 「売却価格 − 諸費用 − ローン残債 − 税金」 の順に引けば概算できます。諸費用は売却価格の4〜5%程度、ローン残債は決済日に売却代金から先に完済、税金は利益が出たときだけかかります。たとえば3,500万円で売れて残債1,800万円、自宅で3,000万円特別控除が使える場合、手取りは約1,555万円です。
- 手取りの計算の順番
- 価格帯別の早見表
- 税金がかかる条件
マンション売却で手元に残る金額は「3つの引き算」で決まる
先に結論をお伝えします。手元に残る金額(手取り額)は、売却価格から「諸費用」「住宅ローン残債」「利益が出た場合の税金」を順に引いた残りです。
| 引くもの | 金額の目安 | 出ていくタイミング |
|---|---|---|
| ①諸費用(仲介手数料・印紙税・抵当権抹消・引っ越しなど) | 売却価格の4〜5%程度 | 契約時と決済(引き渡し)時 |
| ②住宅ローン残債 | 返済予定表か残高証明書で確認 | 決済日に売却代金から完済 |
| ③譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税) | 利益が出た場合だけ。利益の20.315%または39.63% | 売った翌年の確定申告 |
ここで押さえていただきたいのは、この3つが同じ性質のお金ではないということです。①と②は売却が決まれば必ず出ていきます。一方③は、売却価格にかかるのではなく「利益(譲渡所得)」に対してかかる税金で、利益が出なければ1円もかかりません。自宅の売却なら3,000万円の特別控除が使えて税額ゼロになるケースも少なくありません。
「売却額の2割くらいは税金で持っていかれるのでは」と心配される方がいらっしゃいますが、これは誤解です。税率を掛ける相手は売却価格ではなく、買ったときの値段(取得費)と売るためにかかった費用(譲渡費用)を引いた残りです。

まず押さえておきたい3つのこと
- 引く順番を決めておく — 諸費用 → ローン残債 → 税金。この順に引けば、考える材料が1つずつで済みます
- 諸費用は価格の4〜5%で仮置きする — 大半は仲介手数料です。正確な内訳は後から詰められます
- 税金は「利益が出たときだけ」 — 売却価格に掛かるものではありません。ここを切り分けると不安が減ります
査定から引き渡しまでの段取り全体は不動産売却の流れを6ステップで解説に、売却全体の入口は不動産の売却をお考えの方へにまとめています。この記事は、価格の見当がついた後の「では、いくら残るのか」だけを扱います。
なぜ「諸費用 → 残債 → 税金」の順に考えるとブレないのか
手取りの計算で行き詰まる方に共通しているのは、3つを同時に考えようとしていることです。順番を決めると、一度に扱う材料が1つになります。
「必ず出ていくお金」と「出るかもしれないお金」を分ける
諸費用と住宅ローン残債は、売買契約が成立すれば必ず出ていきます。金額もほぼ確定していて、諸費用は売却価格から計算でき、残債は金融機関に聞けば正確な数字が分かります。つまりこの2つは、査定額が出た時点で計算を終えられます。
一方、譲渡所得税は「出るかもしれないお金」です。金額を確定させるには、買ったときの契約書(取得費)や所有期間の判定が必要で、特例が使えるかどうかでも大きく変わります。
だからこそ、先に確定する2つを引いて「税金前の手取り」を出し、そのうえで税金が出るかどうかを判定するのが合理的です。この順番なら、取得費の資料が手元になくても、途中までは計算が進みます。逆に最初から税金を考えはじめると、分からないことが分からないまま不安だけが残ります。

精算はすべて「決済日」に一度で起きる
もう1つの理由は、出ていくお金の多くが引き渡し(決済)の日にまとめて動くことです。
決済日には、買主から売買代金を受け取り、その場で住宅ローンを完済し、仲介手数料の残額と登記費用を支払います。売主・買主・双方の金融機関・司法書士が同席して進めるのが一般的で、1〜2時間で一気に精算します。
つまり、事前に計算していなければ、引き渡し当日に初めて最終的な手取りを知ることになります。 住み替え先の申込みや頭金の用意は、それよりずっと前に決めなければなりません。査定額を聞いた段階で概算を出しておく意味は、ここにあります。

手取りを動かせるのは、4つのうち2つだけ
順番を決めると、もう1つ分かることがあります。自分の努力が効く場所がどこかです。
売却価格・諸費用・ローン残債・税金という4つの数字のうち、諸費用はほぼ固定です。中心の仲介手数料は上限が法律で決まっていて、売却価格が決まればほぼ確定します。ローン残債も、借りた金額とこれまでの返済で決まっている数字です。どちらも交渉や工夫でどうにかなる項目ではありません。
動かせるのは残りの2つ、売却価格と税金(特例が使えるかどうか)です。手取りを増やしたいと考えたら、この2つに時間を使うのが効率的です。逆に言えば、諸費用の数万円を削ることに労力を使っても、手取りはほとんど変わりません。 手取りの計算をしておく価値は、この見極めがつくところにもあります。
価格帯・残債パターン別 手取りの目安早見表
自分の状況に近い行を見つけていただくための早見表です。前提を明示した概算なので、そのまま使える数字ではなく「あたりをつける」ための表としてご覧ください。
早見表(諸費用5%・税金0円で計算)
この表の前提 ①諸費用は引っ越し・ハウスクリーニングまで含めて売却価格の5%と、やや厚めに置いています(実額は3%台後半〜5%程度)。②譲渡所得税は0円として計算しています。自宅の売却で3,000万円特別控除が使え、利益が控除の範囲に収まるケースを想定したものです。利益が3,000万円を超える場合や、自宅以外の物件では税金が加わります。
| 売却価格 | 諸費用(5%) | 残債なし | 残債1,000万円 | 残債2,000万円 |
|---|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 100万円 | 約1,900万円 | 約900万円 | −100万円(オーバーローン) |
| 3,000万円 | 150万円 | 約2,850万円 | 約1,850万円 | 約850万円 |
| 4,000万円 | 200万円 | 約3,800万円 | 約2,800万円 | 約1,800万円 |
| 5,000万円 | 250万円 | 約4,750万円 | 約3,750万円 | 約2,750万円 |
右下のマイナスが、いわゆるオーバーローンです。2,000万円で売れても残債が2,000万円あると、諸費用の分だけ売却代金が足りません。この場合は不足分を自己資金などで補う必要があります。
大阪府の中古マンションの平均成約価格は、2026年8月時点で3,423万円でした(近畿圏不動産流通機構「マンスリーレポート No.165」2026年9月号)。3,000万円と4,000万円の行のあいだが、ひとつの目安になります。

自分の数字を当てはめる——3,500万円・残債1,800万円の場合
早見表の「5%」を実額に置き換えると、こうなります。売却価格3,500万円、住宅ローン残債1,800万円、自宅で3,000万円特別控除が使えるケースです。
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 3,500万円 | — |
| − 仲介手数料 | 122万1,000円 | (3,500万円×3%+6万円)×1.1 |
| − 印紙税 | 1万円 | 売買契約書(1,000万円超5,000万円以下・軽減措置後) |
| − 抵当権抹消 | 約1万9,000円 | 登録免許税2,000円+司法書士報酬 |
| − 引っ越し・クリーニング | 20万円 | 内容により変動 |
| − ローン残債 | 1,800万円 | 決済日の完済額 |
| − 譲渡所得税 | 0円 | 3,000万円特別控除で控除内に収まる想定 |
| = 手取り額 | 約1,555万円 | 諸費用合計は約145万円(価格の約4.1%) |
この約1,555万円が、住み替え先の頭金や次の生活に回せるお金です。査定額を聞いた段階でこの1枚を作っておくと、価格交渉にどこまで応じられるかの下限も同時に見えてきます。
なお、手取りの計算には決済日時点の正確な残債が必要です。金融機関に「この日に完済するには合計いくら必要か」を出してもらうのがいちばん確実です。
残債がまだ分からない段階でも、ここまでは出せる
「残高証明書を取るのはまだ先」という段階でも、手取りの計算は始められます。売却価格から諸費用だけを引いた「残債前・税金前の手取り」は、査定額さえあれば出せるからです。
諸費用を5%とすれば、売却価格の95%——早見表の「残債なし」の列がそれです。3,000万円なら約2,850万円、4,000万円なら約3,800万円。ここから、住宅ローンの返済予定表に載っている残高を引くだけでも、実用に足る概算になります。返済予定表には毎月の返済額と残高が並んでいるので、決済を予定している時期の行を見ればおおよその残債が読めます。正確な金額は、売り出しを決めてから金融機関に出してもらえば間に合います。

諸費用はいくら見ておけばいいか
引き算の1つ目、諸費用です。大半は仲介手数料で、残りは数万円規模の実費です。
仲介手数料の上限は法律にもとづいて決まっており、売買代金が400万円を超える場合は「売買代金×3%+6万円+消費税」が速算式になります。3,500万円なら122万1,000円、3,000万円なら105万6,000円です。売買代金800万円以下の物件には別の特例があり、通常の計算式を超えて上限33万円まで受け取れる代わりに、媒介契約時の事前説明と合意が必要です。
| 売却価格 | 仲介手数料(税込) | 価格に対する割合 |
|---|---|---|
| 2,000万円 | 72万6,000円 | 約3.6% |
| 3,000万円 | 105万6,000円 | 約3.5% |
| 4,000万円 | 138万6,000円 | 約3.5% |
| 5,000万円 | 171万6,000円 | 約3.4% |
これに印紙税(売買価格1,000万円超5,000万円以下なら軽減措置後1万円・令和9年3月31日までに作成される契約書が対象・国税庁タックスアンサー No.7108)と、ローンが残っている場合の抵当権抹消費用(登録免許税は不動産1個につき1,000円+司法書士報酬)が加わります。引っ越しとハウスクリーニングまで足して、合計は売却価格の4〜5%程度が目安です。
諸費用全体でみても、価格が上がるほど割合はわずかに下がります。 印紙税・登記費用・引っ越し費用といった定額の項目に加えて、速算式の「6万円」の部分も定額だからです。

費用の内訳一つずつの金額と支払う時期、手数料の値引き交渉をどう考えるかは不動産売却の仲介手数料はいくら?費用の相場にまとめています。ここでは、手取りを出すための「合計額」だけを扱います。
住宅ローンが残っていても手取りは計算できる
引き算の2つ目、住宅ローン残債です。残債があっても売却はできます。 条件は、引き渡し(決済)の日までにローンを完済して抵当権を抹消することで、その原資には買主から受け取る売却代金をそのまま充てられます。 売る前に現金を用意しておく必要はありません。
分かれ目はひとつだけです。
- 売却見込み額 −(残債 + 諸費用)がプラス → アンダーローン。余った分がそのまま手取りになります
- 同じ計算がマイナス → オーバーローン。不足分を自己資金などで補う必要があります
- 判定に使う残債は「決済予定日時点の金額」 — 毎月減っていくので、査定を取る時期の残高で見ます
早見表の右下のマイナスがオーバーローンでした。この場合でも売却の道が閉じるわけではなく、自己資金を足す、住み替えローンを使うなど、手当ての方法はいくつかあります。ただし条件は金融機関によって異なるため、残債が査定額に近い方は査定と並行して借入先に相談しておくことをお勧めします。

抵当権抹消の手続きと必要書類、残債の3つの調べ方、オーバーローンのときの進め方は不動産売却でローン残債がある家も売れる?にまとめています。
税金がかかるかどうかは「利益が出たか」で決まる
引き算の3つ目、税金です。ここだけは出るか出ないかの判定から始まります。
譲渡所得税がかかるのは、利益(譲渡所得)がプラスになったときだけです。国税庁は譲渡所得を「土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します」と案内しています(タックスアンサー No.3202)。取得費は買ったときの購入代金などですが、建物部分は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します(No.3202)。購入価格を下回って売っても利益が出ることがあるのは、このためです。 譲渡費用は仲介手数料や売主が負担した印紙代などです。つまり諸費用の把握は、そのまま税金の計算の準備にもなります。
税率は所有期間で変わります。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得で20.315%、5年以下なら短期譲渡所得で39.63%です(同 No.3208・No.3211)。

そして自宅の売却なら、居住用財産の3,000万円特別控除があります。国税庁は「マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる」としています(同 No.3302)。利益が3,000万円以内に収まれば税額はゼロです。たとえば利益2,000万円なら、控除がなければ長期税率(所有期間5年超10年以下)で約406万円、控除が使えれば0円。手取りが400万円以上変わる計算になります。要件を満たすかどうかの確認が、手取りに最も大きく効く場面です。
注意点が2つあります。ひとつは、購入時の契約書が見つからない場合です。取得費が分からないときは売った金額の5%を取得費とすることができますが(同 No.3258)、そのぶん利益が大きく出て税額が増えやすくなります。もうひとつは、特例で税額がゼロになる場合でも確定申告が必要なことです。申告して初めて特例が適用されます。

譲渡所得の計算過程と所有期間5年の数え方は不動産売却の税金はいくらかかる?計算3ステップに、3,000万円控除の要件・軽減税率との併用・住宅ローン控除との関係は不動産売却の3000万円控除、条件と落とし穴に、契約書が見つからないときの調べ方は不動産売却の取得費不明を解決する3つの調べ方にまとめています。
よくある質問
あたりをつけるための概算です。諸費用を売却価格の5%、譲渡所得税を0円として計算しているため、実際の金額とはずれます。諸費用は仲介手数料が大半なので価格が決まればほぼ確定しますが、引っ越しの内容で10万〜30万円ほど動きます。税金は取得費・所有期間・特例の適用で大きく変わり、ここが最も振れ幅の大きい項目です。
できます。決済日までに完済して抵当権を抹消すれば問題なく、その原資には買主から受け取る売却代金を充てられます。売る前に自分で現金を用意する必要はありません。確認していただきたいのは、売却見込み額から残債と諸費用を引いた結果がプラスかマイナスかだけです。マイナス(オーバーローン)の場合も売却の道は閉じませんが、不足分の手当てが必要になるため、早めに借入先へ相談してください。
損失が出ていて特例も使わないなら、譲渡所得税の申告は不要です。ただし「申告したほうがよい」場合が2つあります。 ひとつは3,000万円特別控除などの特例を使って税額がゼロになる場合です。申告をして初めて特例が適用されるため、「税金がかからないから何もしなくてよい」と考えると、特例なしの税額を求められることがあります。もうひとつは自宅の売却で損失が出た場合で、買い換えるとき、または売却価格がローン残高を下回るときは、要件を満たせば損失を給与所得など他の所得から差し引ける特例があります(No.3370・3390/令和9年12月31日までの売却が対象)。いずれも判断に迷う場合は税務署または税理士にご確認ください。
3つの数字を集めてください。①不動産会社の査定による売却見込み額、②金融機関に出してもらう決済予定日時点の残債額、③購入時の売買契約書(取得費の確認用)です。この3つが揃えば、諸費用と税金を当てはめてご自身で実額に近い手取りを出せます。当社では物件の情報をお送りいただければ、売却見込み額と諸費用・ローン残債までの概算をお出ししています(税額のご判断は税務署または税理士にご確認ください)。
売り出し価格そのものの決め方や、値下げの下限をどう置くかは不動産売却を高く売る方法と売り出し価格の決め方にまとめています。手取りの計算は、その下限を決める材料にもなります。
まとめ——引く順番を決めれば、手取りは査定の段階で読める
- 手取り額 = 売却価格 − 諸費用 − ローン残債 − 税金。この順に引けば、一度に考える材料が1つで済みます
- 諸費用は売却価格の4〜5%程度。大半は仲介手数料(400万円超なら「3%+6万円+消費税」が上限)で、価格が決まればほぼ確定します
- 残債は決済日に売却代金から先に完済される。売却見込み額から残債と諸費用を引いてマイナスなら、不足分の手当てが必要です
- 税金は利益が出たときだけ。自宅なら3,000万円特別控除で税額ゼロになることもあり、適用の有無で手取りが数百万円変わります
早見表はあくまで目安です。けれど「だいたいこのくらい」が分かっているだけで、住み替え先の予算の立て方も、価格交渉への向き合い方も変わります。数字を先に持っておくことが、売却でいちばん効く準備です。
この記事は制度の一般的な説明です。譲渡所得税の正確な税額と特例の適用可否は税務署または税理士に、決済日時点のローン残債と一括返済の手数料は借入先の金融機関に、売却見込み額と諸費用の実額は不動産会社にご確認ください。税率・控除の内容は国税庁タックスアンサー(No.3202・3208・3211・3258・3302・3370・3390・7108/いずれも令和8年4月1日現在法令等・2026年9月24日閲覧)によるもので、制度は今後変わる可能性があります。統計数値は近畿圏不動産流通機構「マンスリーレポート No.165」(2026年9月号)によります。




