離婚のマンション売却で財産分与・ローン・名義【2026年版】
離婚の話が現実味を帯びてきた。けれど住宅ローンはまだ20年以上残っていて、登記の名義は相手だけ。「この家は自分のものなのか」「ローンはどうなるのか」——お金の話は切り出しにくく、答えが分からないまま時間だけが過ぎていきます。実はその「時間」にこそ、2026年4月から変わったルールが関わってきます。
婚姻中に夫婦の協力で取得したマンションは、登記の名義がどちらか一方だけでも原則として財産分与の対象になります。ただし分けるのは評価額からローン残債を引いた「正味の価値」です。そして2026年4月1日の民法改正で、家庭裁判所へ財産分与を請求できる期間は離婚から2年→5年に伸びました。2026年3月31日以前に離婚した方は、従来どおり2年のままです。
- 名義が一方でも対象になる
- 請求期限は離婚日で変わる
- 残債しだいで結論が変わる
離婚のマンション売却、まず押さえる結論
先に結論をお伝えします。婚姻中に夫婦の協力で取得したマンションは、登記の名義がどちらか一方だけでも、原則として財産分与の対象になります。 民法768条1項は「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定めていて、名義を要件にしていません。話し合いでの離婚(協議離婚)を前提にした条文ですが、民法771条により裁判上の離婚にも準用されます。話し合いがまとまらないときは、民法768条2項により家庭裁判所へ請求する道(調停・審判)があります。
ただし「対象になる」ことと「半分受け取れる」ことは別です。住宅ローンが残っているなら、分ける対象はマンションの評価額からローン残債を引いた「正味の価値」になります。残債のほうが大きい状態(オーバーローン)なら正味の価値はマイナスですから、分けられる財産がそもそも無いという扱いになりやすい。ここを知らないまま「家の半分をもらえるはず」と話を進めると、途中で前提が崩れます。
そして2026年、大きな変更がありました。4月1日施行の民法改正で、家庭裁判所に財産分与を請求できる期間が離婚から2年→5年に伸びています。 ただし2026年3月31日以前に離婚した方は、従来どおり2年のままです。期限を1本の数字で覚えると間違えます。

今日押さえておきたい3つのこと
- 名義ではなく「いつ・誰の協力で得たか」で決まる — 相手の単独名義でも、婚姻中に夫婦の協力で取得したものなら原則対象です
- 分けるのは「評価額−ローン残債」 — まず残高証明と査定額の2つの数字を出すところからです
- 請求期限は離婚日で変わる — 2026年4月1日以後の離婚なら5年、それ以前なら2年です
査定から引き渡しまでの標準的な段取りは不動産売却の流れを6ステップで解説に、売却全体の入口は売却をお考えの方へにまとめています。この記事では、その標準フローに離婚だからこそ加わる論点だけを扱います。
なぜ名義がどちらか一方でも財産分与の対象になるのか
基準は「名義」ではなく「婚姻中に夫婦で築いたかどうか」
財産分与でよく誤解されるのが、登記簿やローン契約書に書かれた名前です。判断基準はそこではありません。
民法762条1項は「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする」と定めています。ここでいう「自己の名で得た財産」は、相続や贈与のように、その人個人に帰属する原因で得たものを指すと、裁判実務では理解されています。裏返せば、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産は、名義が誰であっても清算の対象になります。
住宅ローンを一方の名義で組み、登記もその一方だけというマンションは珍しくありません。それでも、毎月の返済が続けられたのは夫婦の生活全体が回っていたからと見ます。収入を得ていた側だけの功績とは考えない、ということです。

この点は2026年4月の改正でさらに明確になりました。改正後の民法768条3項は「婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」としています。法務省の改正概要資料も「婚姻中の財産取得・維持に対する寄与の割合を原則2分の1ずつに」と説明しています。原則は半分ずつで、そこから動かしたい側が事情を示す、という構図です。
「特有財産」にあたる部分は対象外になりうる
一方で、次のようなものは特有財産として対象から外れうるとされています。
| 性質 | 具体例 | 財産分与での扱い |
|---|---|---|
| 婚姻前から有する財産 | 結婚前に購入した不動産・結婚前からの貯金 | 原則として対象外 |
| 婚姻中に自己の名で得た財産 | 親から相続・贈与された不動産や資金 | 原則として対象外 |
| 婚姻中に夫婦の協力で得た財産 | 婚姻後に購入した自宅・その返済分 | 原則として対象 |
| どちらに属するか明らかでない財産 | 出どころを追えない預貯金など | 共有と推定される(民法762条2項) |
実務でもめやすいのは混ざっているケースです。頭金だけを親から出してもらい、残りは婚姻中の収入で返済した、という形はよくあります。この場合は全体が特有財産になるのではなく、頭金の分が特有財産として考慮されるという考え方が一般的です(評価の方法は事案によって異なります)。該当しそうなら早めに弁護士へご相談ください。

分け方は2通り——「売って分ける」か「住み続けて代償を払う」か
マンションは現金と違って割れません。そこで実務上は、大きく2つの方法のどちらかを選ぶことになります。
| 方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 売却して代金を分ける | マンションを売り、残債を返して手元に残った金額を分ける | どちらも住み続ける予定がない。関係を清算したい |
| 一方が住み続けて代償金を払う | 住む側が所有権を取得し、相手に相当額を支払う | 子どもの学区を変えたくない。住む側に資力がある |
売却して代金を分ける——金額がはっきりする進め方
トラブルが起きにくいのはこちらです。理由は単純で、「いくら」が実際の売買代金として確定するからです。査定を取り、売り出し、買主が決まり、決済日に代金でローンを一括返済して抵当権を抹消し、残った現金を取り決めた割合で分けます。評価額をめぐる言い争いが起きにくく、家を通じた接点も残りません。
注意点は、代金をどう分けるかを売り出し前に決めておくことです。決済日は関係者が集まる一度きりの場で、そこから分配の話を始めると手続きが止まります。仲介手数料や抵当権抹消費用など、代金から差し引かれるものも先に確認してください。

一方が住み続けて代償金を払う——評価額の決め方がカギ
住む側が所有権を取得し、相手に代償金を支払う方法です。子どもの生活環境を変えずに済むのが最大の利点で、実際によく選ばれます。
難しいのは、売らないので「いくらの家か」が確定しない点にあります。売却なら成約価格という答えが出ますが、この方法では評価額を当事者が決めなければなりません。住む側は低く見たいし、出ていく側は高く見たい。ここが最大の争点になります。現実的なのは、複数の不動産会社から査定を取り、その水準をもとに話し合うやり方です。1社だけの数字だと「高く出す会社を選んだだけでは」という疑いが残ります(不動産売却を高く売る方法と売り出し価格の決め方)。
もうひとつ見落とされがちなのが、住み続ける側にローンの名義が無い場合です。名義人が出ていき、名義の無い側が住む——この形をそのまま続けられるかは、後述のとおり借入先の確認しだいです。

ローンが残っている場合——オーバーローンかどうかで変わる
ここが離婚の売却で最も結論を左右する部分です。判定は、査定額とローン残債のどちらが大きいかという一点に尽きます。
| 状態 | 査定額とローン残債の関係 | 財産分与での一般的な扱い |
|---|---|---|
| アンダーローン | 査定額 > ローン残債 | 差額(正味の価値)が分与の対象になる |
| オーバーローン | 査定額 < ローン残債 | 分与できる積極財産が無いとされやすい |
アンダーローン——差額が分ける対象になる
売却代金でローンを完済でき、手元に現金が残る状態です。この場合、残った金額が分与の対象になります。仲介手数料などを差し引いた後の金額で考えるのが実際的です。
住み続ける方法を選ぶ場合も考え方は同じで、評価額から残債を引いた差額を基準に代償金を計算します。「評価額3,000万円だから1,500万円払う」ではなく、残債が2,000万円なら差額1,000万円が基準、という順序です。その差額をどう分けるかがその次の話で、原則は半分ずつです。

オーバーローン——分けるものが無い、という結論になりやすい
売却代金だけでは完済できない状態です。この場合、財産分与の対象となる積極財産が無い(またはマイナス)として、その不動産については分与額をゼロとする考え方が一般的とされています。ただしこれは条文に書かれたルールではなく、他の預貯金や退職金なども含めた全体のなかで総合的に判断されます。「オーバーローンなら必ずゼロ」と決まっているわけではありません。
残る債務の負担を夫婦間の合意で決めること自体は可能です。ただしその合意は金融機関に対しては効力を持ちません(次章のとおりです)。
残債がある家をどう売るか、抵当権の抹消がどう進むかは不動産売却でローン残債がある家も売れる?で詳しく扱っています。まずやるべきは、金融機関の残高証明(または返済予定表)と査定額を並べて差額を出すことです。この1枚の数字が出るまで、話し合いは前に進みません。
名義・連帯保証・ペアローンの注意点
離婚の相談で最も見落とされ、後から一番こじれるのがこの部分です。ポイントは「夫婦間の取り決めは、金融機関には及ばない」という一点に集約されます。
ローンが残ったまま、夫婦の合意だけで名義は移せない
「離婚するから、家の名義とローンを妻に移したい」というご相談をよくいただきます。しかし、ローンの債務者を入れ替えるには、原則として金融機関(債権者)の承諾が必要です。
民法472条は免責的債務引受について定めており、債務者が債務を免れるこの形は、債権者と引受人との契約によるか、債務者と引受人が契約し、債権者が引受人に承諾をすることによってできるとしています(同条2項・3項)。どちらの経路でも金融機関が関与します。 夫婦だけで合意しても、返済を請求される相手は変わりません。
さらに住宅ローンの契約には、借入先に無断で所有権を移すことを禁じる条項が置かれていることが多く、勝手に移すと契約に触れるおそれがあります。返済が終わるまで抵当権も付いたままです。名義を動かしたいなら、まず借入先に相談する。 実務では住み続ける側が自分名義で借り換える形も選ばれますが、その人の収入で審査に通るかが前提です。

連帯保証・連帯債務・ペアローンは、離婚では外れない
こちらも同じ理屈です。保証契約は、保証人と金融機関の間の契約で、民法446条1項は「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う」と定めています。離婚は夫婦間の身分関係の変化であって、この契約を終わらせる事由ではありません。
連帯債務(収入合算などで2人が同じ債務を負う形)も同じです。民法436条により、債権者は連帯債務者の1人に対して全部の履行を請求できます。ペアローンは、夫婦がそれぞれ自分のローンの債務者になり、互いに相手のローンの連帯保証人になる形が一般的で、その場合は前段の保証の話がそのまま当てはまります。いずれの立場でも、「返済は相手がすると取り決めた」としても、相手が滞納すれば請求は自分に来ます。協議書にどう書いても、この結論は変わりません。

- 自分が連帯保証人・連帯債務者・ペアローンの当事者になっていないか — 契約書と返済予定表で確認します
- 外したい場合、借り換えや代わりの保証人が必要になることがある — 金融機関の個別判断です
- 住み続ける側が名義人でない場合、その状態を続けられるか — 借入先への確認が先です
借り換えの可否や条件は、借入先や個人の状況によって大きく異なります。この章は一般的な仕組みの説明ですので、ご自身のケースは必ず借入先の金融機関にご確認ください。 なお夫婦の共有名義になっている場合の売却は不動産売却における共有名義・相続登記の進め方もあわせてご覧ください(相続の文脈で書いた記事ですが、共有者全員の同意が要るという考え方は共通です)。
財産分与の請求期限——2026年4月に2年から5年へ(離婚日で変わる)
離婚の財産分与には期限があります。ここは2026年に変わったばかりで、古い情報が多く出回っている部分です。
5年になったのは2026年4月1日から。それ以前の離婚は2年のまま
改正後の民法768条2項は、話し合いがまとまらないとき、または相手が応じないなどで話し合いができないときに家庭裁判所へ請求できるとしたうえで、ただし書で「離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない」と定めています。改正前は「二年」でした。
民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)によるもので、法務省の案内のとおり2026年(令和8年)4月1日に施行されました。同法の概要資料も「財産分与の請求期間を2年から5年に伸長」と明記しています。
ここからが重要です。 同法の附則4条は「施行日前に離婚し、又は婚姻が取り消された場合における財産の分与に関する処分を家庭裁判所に請求することができる期間の制限については、なお従前の例による」としています。つまり2026年3月31日以前に離婚した方は、5年ではなく従来の2年が適用されます。
| 離婚が成立した時期 | 家庭裁判所へ請求できる期間 |
|---|---|
| 2026年4月1日以後 | 離婚の時から5年 |
| 2026年3月31日以前 | 離婚の時から2年(従前のまま) |
なお、この経過措置は家庭裁判所へ請求できる期間についてのものです。改正法の附則は、特別の定めがある場合を除いて新しい規定を施行日前に生じた事項にも適用するとしており(附則2条)、この記事の前半で触れた寄与の程度を相等しいとみなす規定(民法768条3項)は、期間制限の経過措置(附則4条)の対象には入っていません。
「最近5年になったらしい」と聞いて安心していたら自分の離婚は改正前だった——という取り違えが起こりえます。ご自身の離婚日がどちら側かを必ず確認してください。
期限が延びても、売却は早く動いたほうがいい
期限は「家庭裁判所に請求できる期間」で、当事者どうしの話し合いを禁じる期間ではありません。それでも早めに動いたほうがいい理由が3つあります。
ひとつは、時間が経つほど事実確認が難しくなることです。頭金の出どころ、婚姻前の残高、返済の経緯——これらを示す資料は、口座の取引履歴の保存期間などの都合で年々そろえにくくなります。
次に、その間もローンの返済と維持費が発生し続けることです。管理費・修繕積立金・固定資産税は話し合いが止まっていてもかかり、滞納が生じると売却時の精算が複雑になります。
そして、相手の状況は変わります。 再婚、転職、収入の変化——時間が空くほど連絡が取りづらくなることもあります。合意できる時期に合意しておくのが、結局はいちばん負担が軽く済みます。

よくある質問
請求できます。民法768条1項は名義を要件としておらず、婚姻中に夫婦の協力で取得した財産かどうかで判断されるからです。ただし結婚前から所有していた場合や相続・贈与で得た場合は特有財産として扱われうるため、取得の経緯を示す資料(売買契約書・通帳・贈与の記録)を手元にそろえておいてください。
その不動産については分与の対象となる積極財産が無いとして、分与額をゼロとする考え方が一般的とされています。ただし条文で決まったルールではなく、預貯金など他の財産も含めて総合的に判断されます。残る債務の負担を夫婦間で取り決めること自体はできますが、その取り決めは金融機関には及びません。
国税庁は、離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはないとしています。贈与ではなく、財産分与請求権に基づく給付と考えられるためです。ただし例外が2つあり、①分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合は、その多過ぎる部分に、②離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合は、もらった財産すべてに贈与税がかかるとされています(タックスアンサーNo.4414)。
かかる場合があります。国税庁は、財産分与が土地や建物などで行われたときは分与した人に譲渡所得の課税が行われるとしており、分与した時の時価が譲渡所得の収入金額になるとしています(タックスアンサーNo.3114)。時価で譲渡したものとして扱われるためで、「あげたのに税金がかかるのか」と驚かれる点です。税額が出るかは取得費や特例で変わりますので、不動産売却の税金はいくらかかる?もご確認のうえ、税務署または税理士にご相談ください。
国税庁は、分与を受けた人は分与を受けた日にその時の時価で取得したことになるとし、将来売った場合の長期譲渡・短期譲渡の判定は財産分与を受けた日を基に行うとしています(タックスアンサーNo.3114)。結婚時に購入した日からではありません。売却時期で税率が変わりますので、不動産売却の3000万円控除、条件と落とし穴とあわせて売る前にご確認ください。
離婚にともなう売却では、内覧の日程調整や書類のやり取りを、当事者が直接顔を合わせずに進めたいというご希望をよくいただきます。当社が間に入り、当事者どうしが直接やり取りせずに進められますので、遠慮なくお申し付けください。
まとめ——「正味の価値」と「離婚日」を先に確認する
- 名義がどちらか一方でも、婚姻中に夫婦の協力で取得したなら原則として対象 — 改正後は寄与の程度が原則2分の1とされています
- 分けるのは評価額からローン残債を引いた正味の価値 — 残高証明と査定額をそろえるのが最初の一歩です
- 連帯保証・ペアローンは離婚では外れない — 夫婦間の取り決めは金融機関には及びません
- 請求期限は離婚日で変わる — 2026年4月1日以後の離婚は5年、それ以前は2年のままです
離婚の売却でつまずく方によくあるのは、話し合いの中身よりも「判断に必要な数字がまだ手元に無い」ことです。査定額とローン残債、この2つが出れば、売って分けるのか住み続けるのか、そもそも分ける財産があるのかまで見えてきます。感情の話は、数字が出てからのほうが落ち着いて進みます。
売却全体の段取りを1冊で確認したい方は、下のチェックリストをお使いください。流れ・必要書類・媒介契約の選び方に加えて、残債や共有名義のケース別の考え方もまとめてあります。
この記事は法律・税制の一般的な説明です。ご自身のケースで財産分与がどう扱われるかは弁護士に、税金の判定と申告は税務署または税理士に、ローンの名義変更・連帯保証の取り扱いは借入先の金融機関に、物件の相場や売り方は不動産会社にご確認ください。制度は改正されることがありますので、手続きの際は最新の情報をご確認ください。




