マンション購入の名義、夫婦の持分とペアローン【2026年版】
「二人で借りれば、希望の物件に手が届く」。共働きのご夫婦から、この相談をよくいただきます。ただ、ペアローンにするか収入合算にするか、名義は共有にするのか——ここを決めないまま物件探しだけ進めると、契約直前で慌てることになります。
夫婦の名義(単独か共有か)と、共有にするときの持分割合は、話し合いの好みではなくそれぞれが実際に出したお金の割合で決まります。国税庁は、3,000万円の住宅を夫2,000万円・妻1,000万円で買って持分を2分の1ずつにした場合、差額の500万円は夫から妻への贈与になると示しています。先にローンの組み方を決め、持分はそこから計算する——この順番です。
- 名義は出資割合で決まる
- ペアローンと収入合算
- 離婚・死亡で差が出る
マンション購入の名義、夫婦はどう決める?結論は「出資割合」
先に結論をお伝えします。夫婦の名義を単独にするか共有にするか、共有にするなら持分をいくつにするかは、話し合いの好みではなく「それぞれが実際に出したお金の割合」で決まります。
決める順番も一本道です。
| 順番 | 決めること | 決め方 |
|---|---|---|
| ① | 頭金を誰がいくら出すか | それぞれの預貯金から出す額を確定させる |
| ② | ローンの組み方 | 単独/ペアローン/収入合算のどれかを選ぶ |
| ③ | 名義と持分割合 | ①+②の出資額の比率をそのまま持分にする |
③は計算するだけで、話し合う余地がありません。迷いが生じるのは①と②で、そこが決まれば持分は自動的に出ます。 逆に「とりあえず半分ずつにしておこう」から入ると、あとから税金の問題が出てきます。
この順番を崩すと、決まるはずのことが決まらなくなります。物件を決めて申込書を書く段になってから「頭金はどちらが出す?」「持分は半分でいい?」と話し始めると、住宅ローンの事前審査をどの形で出すかが決められません。 ペアローンと収入合算では審査に出す書類も、審査が通る金額も変わります。逆に①と②さえ先に固まっていれば、物件が決まってから契約までは事務作業として流れていきます。

夫婦で借りること自体は、もう珍しい選択ではありません。住宅金融支援機構の調査(2026年1月調査・2025年4〜9月に住宅ローンを借りた1,237人)では、ペアローンまたは収入合算を利用した人が38.7%。30〜39歳(508人)に限ると、ペアローン30.9%・収入合算14.4%で、あわせて45.3%にのぼります。

名義を決める前に、二人で確認しておきたいこと
- 頭金の出どころ — 夫の口座か、妻の口座か、両方か。金額まで決める
- ローンの組み方 — 借入可能額だけで選ばない。万一のときの残り方が方式ごとに違います
- 働き方の見通し — 産休・育休・時短・転職。収入が変わる可能性を口に出しておく
3つ目は税金の話ではなく、返済が続けられるかの話です。二人の収入を前提に借りた額は、片方が働き方を変えると重くなります。申込から引き渡しまでの段取りは中古マンション契約の流れ7ステップにまとめています。
なぜ持分割合を出資割合に合わせる必要があるのか
理由は2つあります。ズレると贈与税がかかること、そして住宅ローン控除が思ったほど増えないことです。
持分と出資がズレた分は「贈与」になる
国税庁は、この論点にそのものずばりの解説を出しています。総額3,000万円の住宅を、夫が2,000万円・妻が1,000万円の資金を負担して購入し、登記は夫婦それぞれ2分の1ずつにした場合。妻の持分は3,000万円の2分の1で1,500万円分ですが、妻が出したお金は1,000万円しかありません。差額の500万円は、夫から妻へ贈与があったことになります。
同じ事例でも、負担割合どおりに夫3分の2・妻3分の1で登記していれば、贈与の問題は生じません。

では500万円の贈与にいくらかかるのか。夫婦間の贈与は「一般贈与財産」として計算します。その年に他の贈与がなければ、国税庁の速算表に当てはめて基礎控除110万円を引いた390万円に税率20%をかけ、控除額25万円を差し引いて53万円です。登記のときに深く考えなかった、という理由で53万円です。
婚姻期間が20年以上の夫婦には、居住用不動産またはその取得資金の贈与について最高2,000万円まで控除できる特例(贈与税の配偶者控除)があります。ただし同じ配偶者からは一生に一度です。初めてのマイホームを買う時期のご夫婦は婚姻20年に届かないことが多いので、この特例は使えないとお考えください。
住宅ローン控除も「自分が負担した分」までしか効かない
もうひとつの理由が住宅ローン控除です。控除の対象になるのは、その人が自分の持分を取得するために負担している借入金だけで、名義だけ共有にしても控除額は増えません。
国税庁の質疑応答事例は、4,500万円の物件を夫婦2分の1ずつの共有とし、頭金500万円・連帯債務の借入金4,000万円で買ったケースを挙げています。夫婦が借入金を6対4で負担する約束にすると、夫の負担額は2,400万円になりますが、夫の持分(2分の1)を取得するために必要な借入金は2,000万円まで。控除の対象は2,000万円で頭打ちになり、はみ出した400万円は「妻の持分のために夫が肩代わりした借入金」=妻への贈与、と整理されます。
この事例には「連帯債務の負担割合は、所得金額等に応じて合理的に定める必要がある」という注記まで付いています。借入の負担割合も、持分も、実態から離れた数字を入れてはいけないということです。

ペアローンと収入合算、3つの方式の違い
「夫婦で借りる」には3つの形があります。ここを取り違えたまま話が進むことが本当に多いので、表で押さえてください。
| 方式 | ローン契約 | 夫婦の立場 | 団信 | 住宅ローン控除 |
|---|---|---|---|---|
| ペアローン | 2本 | 二人とも債務者。互いに相手の連帯保証人になる | それぞれが自分のローンに加入 | 二人とも対象 |
| 収入合算(連帯債務型) | 1本 | 二人とも債務者 | 商品による(一人だけの場合と、二人加入できる場合がある) | 二人とも対象 |
| 収入合算(連帯保証型) | 1本 | 債務者は1人。もう一方は連帯保証人 | 債務者のみ | 一般に債務者のみ |
※取扱いは金融機関・商品ごとに異なります。必ず借入先にご確認ください。
ペアローン——契約が2本になる
夫婦それぞれが別々にローンを契約し、多くの場合、互いに相手の連帯保証人になります。契約が2本あるので、事務手数料や印紙代などの諸費用も2本分かかるのが一般的です。 金利タイプや返済期間を別々に選べる一方、手続きも書類も2倍になります。

借入可能額は二人それぞれが借りられる額の合計になるので、単独では届かない物件に手が届きます。裏を返すと、二人が働き続けることを前提にした返済額になりやすい形でもあります。借りられる額と、無理なく返せる額は別ものです。
二人とも債務者なので、条件を満たせばそれぞれが住宅ローン控除を受けられます。 ただし控除を受けるには合計所得金額2,000万円以下などの要件があり、金額は各自の年末残高と所得税額で決まります。詳しくは中古マンション購入の注意点7つもあわせてご覧ください。
収入合算(連帯債務型)——契約は1本、債務者は二人
契約は1本のまま、夫婦がそろって債務者になります。フラット35で採用されている形で、返済義務は二人が負います。二人とも債務者なので、持分を持ち、住宅ローン控除の対象にもなります。
収入合算(連帯保証型)——契約は1本、債務者は一人
契約は1本で、債務者は1人。もう一方は連帯保証人として審査上の収入だけを足す形です。連帯保証人は自分の持分を取得するための借入金を負っていないため、一般に住宅ローン控除の対象になりません。
そして、ここが見落とされがちなところですが——連帯保証人側が持分を持てるのは、自分の預貯金から頭金を出した分だけです。ローンで買った分は債務者の出資なので、連帯保証だからという理由で持分を半分にすると、前章の贈与の話に戻ります。

持分割合の決め方と、共有名義のメリット・デメリット
計算は「出資総額に対する比率」だけ
持分の計算は割り算ひとつです。物件の購入代金に対して、それぞれがいくら出したか。頭金と、自分が負担するローンの額を足したものが「その人の出資額」になります。
たとえば3,500万円のマンションを、頭金500万円(夫300万円・妻200万円)、ペアローンで夫1,800万円・妻1,200万円を借りて買う場合。夫の出資は2,100万円、妻は1,400万円。持分は夫5分の3、妻5分の2です。

割り切れない比率になったときは、登記の持分に端数が出ます。無理にきれいな数字へ丸めると、丸めた分が贈与とみなされる余地が生まれます。端数は端数のまま登記するのが原則で、迷ったら司法書士と税務署に確認してください。登記費用を含む購入時の費用は中古マンションの諸費用にまとめています。
共有名義のメリット
- 控除の枠を二人分使える — 住宅ローン控除は一人ひとりの所得税から差し引く仕組みです。二人とも債務者なら、それぞれが自分の年末残高で計算できます
- 借入可能額を増やしやすい — 単独では届かない金額に手が届きます
- 床面積の要件で不利にならない — 住宅ローン控除の床面積は持分を掛けて判定しません。マンションなら登記事項証明書の専有部分の面積(原則50平方メートル以上)で見ます
共有名義のデメリット
いちばん大きいのは、その家に関する決定に二人の同意が要るようになることです。売却も、借り換えも、共有者全員の合意がなければ進みません。関係が良好なうちは意識しませんが、意見が割れたときに動けなくなります。
相続のときにも共有は効いてきます。ペアローンで夫が亡くなった場合、夫のローンは団信で完済されますが、夫が持っていた持分そのものは相続財産として残ります。 相続人が配偶者だけなら問題になりませんが、お子さんがいればお子さんも相続人ですし、お子さんがいない場合はご両親やご兄弟が相続人になることがあります。共有者が増えると、売るときに全員の合意が必要になります。
もうひとつが、返済が二人の収入を前提にしていることです。片方が働き方を変えると、当初の返済計画がそのままでは回らなくなります。 産休・育休・時短の期間をあらかじめ見込んでおくことが、共有名義そのものより重要かもしれません。
連帯保証人と連帯債務者の違い、離婚・死亡時に起こること
言葉の違いは「自分の債務か、人の債務の保証か」
- 連帯債務者 — 自分自身の債務として、最初から返済義務を負う人。金融機関は二人のどちらにも全額を請求できます
- 連帯保証人 — 自分の債務ではなく、相手の債務を保証する立場。ただし「まず本人に請求してください」と言う権利がありません(催告の抗弁権・検索の抗弁権がない)。返済が滞れば、金融機関は主債務者を飛ばして連帯保証人へ全額を請求できます。自分が負う借入金ではないので、一般に住宅ローン控除の対象にはなりません
「保証人だから自分が先に請求されることはない」とお考えの方が少なくありませんが、連帯保証にその順番はありません。そしてペアローンでは、一般に夫婦が互いに相手の連帯保証人になります(互いを連帯保証人としない商品もあるので、ご自身の契約がどうなっているかは借入先にご確認ください)。連帯保証人になっている以上、離婚しても相手のローンの保証人であり続けます。

離婚したとき
ローンが残ったまま離婚する場合、選択肢は大きく3つ。売って清算する、一方が住み続けて単独名義へ変える、そのまま共有で持ち続ける。このうち「単独名義へ変える」は、金融機関の承諾が要ります。 持分の移転登記そのものは当事者の合意でできますが、金融機関に無断で名義を移すとローン契約の違反となり、残額の一括返済を求められることがあります。
なお離婚に伴う財産分与では、通常、贈与税はかかりません。夫婦の財産関係の清算としての給付だからです(分与された額が事情に照らして多すぎる場合などは例外)。ただし、不動産を渡した側には譲渡所得の課税という別の論点があります。売却も含めた具体的な進め方は離婚のマンション売却で財産分与・ローン・名義で扱っています。
どちらかが亡くなったとき
ここがペアローンのいちばん大事な論点です。ペアローンは契約が2本なので、団体信用生命保険もそれぞれのローンに付きます。 夫が亡くなれば夫のローンは団信で完済されますが、妻のローンはそのまま残ります。「片方に何かあれば全部なくなる」ではない、という点だけは契約前に共有しておいてください。
例外的な仕組みもあります。フラット35の「デュエット(ペア連生団信)」は、連帯債務の夫婦が二人で加入できる団信で、どちらかに万一のことがあった場合、住宅の持分や返済割合にかかわらず以後の返済が不要になります。対象には戸籍上の夫婦のほか、婚約関係・内縁関係・同性パートナーの関係にある方も含まれます。同種の商品を扱う民間金融機関もあります。なお、加入する団信の種類によって借入金利は変わります。【フラット35】もデュエットを選ぶと借入金利が上乗せになりますし、民間の連生団信も上乗せとなる商品が多いので、保障の内容と金利はセットでご確認ください。

年齢と返済期間、団信の入りやすさをあわせて考えたい方はマンション購入、何歳まで買える?もご参照ください。
よくある質問
借入可能額だけで選ばないことをおすすめします。ペアローンは二人とも控除を使えて金利タイプも別々に選べますが、契約が2本になり諸費用も2本分、団信も別々です。収入合算(連帯債務型)は契約1本で諸費用を抑えやすい一方、団信の扱いは商品によります。判断材料は「控除」「諸費用」「団信」「働き方が変わったときの耐性」の4つで、正解はご夫婦ごとに違います。
一致させるのが原則です。ズレた分は贈与とみなされる可能性があり、国税庁も具体例を挙げて説明しています。逆に言えば、出資割合どおりに登記すれば贈与の問題は生じません。 端数が出ても丸めず、そのまま登記してください。
自動的には何も変わりません。ローンも共有名義も、離婚届を出しただけでは残ったままです。互いの連帯保証も続きます。単独名義へ変えるには金融機関の承諾が必要で、収入面で通らないこともあります。離婚を決めてから考えるより、契約前に「そうなったらどうするか」を一度話しておくほうが、結果的に選択肢が広く残ります。
あります。売却や借り換えを一人で判断できること、団信が1本で完結すること、手続きと書類が簡潔なことです。頭金を片方の預貯金から出し、ローンも一人で組めるなら、単独名義のほうがすっきりします。 共有にするかどうかは、借入可能額を増やす必要があるか、控除を二人分使いたいか、という実利で決めてください。
まとめ——名義と持分は「出したお金」と「これからの変化」で決める
- 持分は出資割合に合わせる — 頭金+自分が負担するローン額の比率がそのまま持分。ズレた分は贈与とみなされます
- 順番は、頭金 → ローンの組み方 → 持分 — ①②が決まれば③は計算するだけです
- 3つの方式は「債務者が誰か」で分かれる — ペアローン(二人・契約2本)、連帯債務型(二人・契約1本)、連帯保証型(一人・契約1本)。控除も団信もここで決まります
- 共有名義は、売却も借り換えも二人の同意が要る — 万一のときの残り方とあわせて、契約前に話しておく
夫婦で買うという選択そのものに、良し悪しはありません。決め方の順番を守ることと、働き方が変わったときにどうするかを先に話しておくこと。 この2つができていれば、名義の話で後悔することはまずありません。
この記事は制度の一般的な説明です。贈与税や住宅ローン控除の具体的な取扱いはお近くの税務署に、ローンの組み方・団体信用生命保険の内容・持分の決め方に伴う手続きは、借入先の金融機関と司法書士にご確認ください。




