中古マンションのリフォームは築年数の4基準で判断(2026年)
リフォーム前提で中古マンションを探していると、「築年数が古いと、そもそもできる工事が限られるのでは」という不安が必ず出てきます。かといって、築何年までなら大丈夫という線が引いてある資料も見当たりません。
中古マンションでリフォームできる範囲を決めているのは、築年数そのものではなく①新耐震基準(1981年6月1日)②構造種別 ③給排水管の更新時期 ④アスベストの可能性の4つです。①②が間取りの自由度、③④が工事範囲と費用に効きます。そして4つとも、重要事項説明と管理組合の資料をたどれば契約前に確認できます(「記録が残っていない」と分かることも含めて)。
- リフォーム可否の4基準
- 築年数で決まらない訳
- 内覧前に見る資料
中古マンションのリフォームで見るべきは「築年数」ではなく4つの基準
先に結論をお伝えします。リフォームを前提に中古マンションを探すとき、できる工事の範囲を決めているのは築年数という数字ではありません。次の4つです。
| 見る基準 | リフォームの何に効くか | どこで分かるか |
|---|---|---|
| ① 新耐震基準(1981年6月1日)と耐震補強 | 住戸内に補強部材が入っていると、間取り変更の自由度が下がることがある | 建築確認の日・重要事項説明・管理組合の資料 |
| ② 構造種別(壁式かラーメンか) | 抜ける壁と抜けない壁が変わる=間取り変更の可否 | 構造図(管理組合が保管) |
| ③ 給排水管の更新時期 | 水回りの工事範囲と費用。更新済みかどうかで変わる | 長期修繕計画・大規模修繕の実施記録 |
| ④ アスベスト使用の可能性(2006年9月1日) | 工事前の調査が必要になり、工期と費用に影響する | 新築工事の着工日・石綿調査の記録 |
この4つは、どれも築年数と関係はありますが、築年数では決まりません。たとえば同じ築30年でも、大規模修繕で給排水管を更新済みのマンションと、一度も手を入れていないマンションでは、水回りの工事で必要になる範囲がまるで違います。
ですので「築何年までならリフォームできますか」という問いには、正確にはお答えできません。答えられるのは「この物件は4つの基準がこうなっているので、ここまでできます」という物件単位の話だけです。
- 築年数は4つの基準を確認する入口であって、答えではない
- 4つのうち①②が間取りに、③④が工事範囲と費用に効く
- 4つとも、買う前に資料で確認できる(「記録が残っていない」と分かることも含めて)
この記事は中古マンション(区分所有建物)を前提にしています。一戸建ては構造も確認の方法も変わりますので、そのままは当てはまりません。

なぜ「築年数」だけでは判断できないのか
理由は、リフォームの可否を決めているのが経過年数ではなく、建物がどう作られ、その後どう手を入れられてきたかだからです。
たとえば、同じ1985年に完成した2棟を並べてみます。A棟は壁式構造で、耐震補強はしていないが、大規模修繕で給排水管を更新済み。B棟は柱と梁で支えるラーメン構造で、住戸内に耐震補強の部材が入っており、配管は未更新。
A棟は間取り変更に大きな制約が残る一方、水回りは動かしやすい。B棟は間仕切りを動かしやすい代わりに、補強部材の周りは触れず、水回りを替えるなら配管の更新も一緒に考えることになります。築年数は同じでも、できることは正反対に近いわけです。
なお、買ってよい築年数そのものは中古マンションは築何年まで買える?で、耐震・管理・お金の3つの基準として整理しました。この記事はそこから一歩進めて、「では工事はどこまでできるのか」を扱います。
年数の境目はいくつもあります。1981年6月1日(新耐震基準)、2006年9月1日(石綿の製造等の禁止)、そして築30〜40年前後(給排水管の取替えの目安)。意味がそれぞれ違うので、ひとまとめに「築◯年」で考えないのがコツです。

リフォームを左右する4つの基準
ここからは、4つの基準を1つずつ見ていきます。それぞれ「何が変わるか」「望ましいのはどちらか」を揃えてあります。
基準① 新耐震基準(1981年6月1日)と耐震補強の有無
何が変わるか——建物の安全性の前提と、住戸内に動かせない補強部材が入っているかどうかです。
新耐震基準は、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用されている基準です。ここで大事なのは、境目が竣工年ではなく建築確認を受けた日だということ。着工から完成まで1〜2年かかることもあるため、1982年や1983年に完成した建物でも旧耐震にあたる場合があります。

リフォームの視点で効いてくるのは、その後の耐震補強です。旧耐震のマンションが耐震改修を行うと、補強の部材が住戸内や開口部に設置されることがあります。国土交通省の「マンション耐震化マニュアル」も、工法によっては「補強部材を住戸内に設置することにより、改修後の使い勝手に影響したり、専有面積が増減する場合がある」「補強部材を開口部に設置する工法については、日照・採光が遮られたり、圧迫感がある場合がある」としています。
つまり耐震補強済みは、安全性の面では安心材料ですが、部屋の中に動かせないものが増えている可能性もある、ということです。
望ましいのは——新耐震(1981年6月1日以降の建築確認)。旧耐震なら、耐震診断・耐震改修の実施状況と、住戸内に補強部材があるかどうかをセットで確認します。

基準② 構造種別(壁式構造かラーメン構造か)
何が変わるか——抜ける壁と抜けない壁、つまり間取り変更の可否です。
マンションの構造は大きく2つに分かれます。壁式構造は床と壁の面で建物を支えるつくりで、住戸の中の壁でも建物を支えているものがあり、撤去できません。ラーメン構造は柱と梁で支えるつくりで、住戸内の間仕切り壁は比較的自由に動かせます(代わりに部屋の隅に柱型、天井に梁型が出ます)。
壁式構造は低層のマンションや団地型で多く採用されてきた、という傾向はあります。ただし「築◯年より前は壁式」といった年数の線引きはありません。同じ年代でも、規模や設計によって違います。
そして厄介なのは、どの壁が構造を支えているかは間取り図では分からないことです。判断には構造図(設計図書)の確認と、専門家の判断が要ります。間取りを変える前提で買うなら、ここは必ず契約前に押さえてください。
なお、構造の話とは別に、床材・窓・玄関ドアなどには管理規約の側からも制限がかかります。そちらは中古マンションのリフォームで管理組合が絡む5つの制限にまとめました。
望ましいのは——間取りを変えたいならラーメン構造。壁式でも間仕切りだけの壁は動かせることがあるので、構造図で個別に確認します。

基準③ 給排水管の更新時期
何が変わるか——水回りリフォームの工事範囲と費用です。
配管には、管理組合が管理する共用部分と、自分のリフォームで手を入れられる専有部分があります。国土交通省のマンション標準管理規約(別表第2)では、給水管は本管から各住戸のメーターを含む部分まで、雑排水管と汚水管は配管継手と立て管が共用部分とされています。裏返せば、メーターから先の住戸内の配管と、立て管につながる横引き管が、自分でさわれる範囲です。ただし実際の区分は各マンションの管理規約で決まります。下の階の天井裏を通る横引き管などを共用部分としている例もあるので、規約でご確認ください。
更新時期の目安として、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」が示す修繕周期の例では、給水管・排水管の取替えが30〜40年、内側を樹脂などで覆う更生工事が19〜23年。専有部分の配管も、共用部分の取替えと同時に行う前提で28〜32年の例が示されています。
ここが実務では大きく効きます。共用部分の取替えがまだ先なのに住戸内の水回りだけ先にフルリフォームすると、数年後に管理組合の工事で壁や天井を開けることになりかねません。逆に、大規模修繕で配管を更新済みの物件は、その心配がないわけです。
望ましいのは——長期修繕計画で給排水管の更新が実施済み、または直近で予定されている物件です。

基準④ アスベスト使用の可能性(2006年9月1日)
何が変わるか——工事前の調査の要否と、それにともなう工期・費用です。
石綿(アスベスト)は、労働安全衛生法施行令によって重量の0.1%を超えて含有するものの製造・使用等が禁止されています。実務上の境目になるのが2006年(平成18年)9月1日で、石綿障害予防規則は、新築工事の着工日がこの日以降の建物については、着工日を設計図書等の文書で確認する方法だけで事前調査を済ませてよいと定めています。裏返せば、それより前に着工した建物は、書類と目視による調査が必要ということです。
さらに2022年4月1日から、請負代金100万円以上の建築物の改修工事は、事前調査の結果を労働基準監督署へ報告することが義務づけられました(報告するのは工事を行う事業者で、施主ではありません)。2023年10月1日からは、書類と目視による調査を有資格者が行うことも義務になっています(着工日の確認だけで済む場合は対象外です)。
ここで誤解しないでいただきたいのは、「古い建物だから住めない」という話ではないことです。建材に含まれていても、そのままにしておく分には問題になりにくいものが多く、問題になるのは壊したり削ったりするとき(露出した吹付け材が傷んでいる場合は別で、管理組合にご相談いただく事項です)。ただし、調査と(該当した場合の)対策の分だけ、工期と費用が上振れする可能性は見ておいてください。
望ましいのは——2006年9月1日以降の着工。それ以前なら、調査を含めた見積もりをリフォーム会社に出してもらいます。

内覧・資料で4つの基準を確認する方法
この4つは、どれも買う前に資料をたどって確認できます。しかも多くは、重要事項説明と管理組合の資料で足ります。
| 確認したいこと | 見る資料 | 誰に頼むか |
|---|---|---|
| ① 新耐震か/耐震診断の有無 | 建築確認済証・重要事項説明書 | 仲介業者 |
| ① 耐震改修の実施と補強の位置 | 総会議事録・長期修繕計画 | 管理会社・管理組合 |
| ② 構造種別・抜ける壁 | 構造図(設計図書) | 管理会社・リフォーム会社 |
| ③ 給排水管の更新履歴と予定 | 長期修繕計画・大規模修繕の記録 | 管理会社 |
| ④ 新築工事の着工日・石綿調査の記録 | 設計図書・竣工図書(管理組合が保管)・重要事項説明書 | 仲介業者・管理会社 |
重要事項説明でどこまで分かるか、を先に整理します。宅地建物取引業法施行規則の第16条の4の3は、建物の売買では「石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容」と、「昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除き、耐震診断を受けたものであるときは、その内容」を説明すべき事項として定めています。
ここで注意が2つあります。ひとつは、これが「記録があれば説明する」という定めであること。調査や診断そのものを売主に義務づけるものではないので、記録が無ければ「無し」と説明されて終わります。もうひとつは、この耐震診断の条文が「新築の工事に着手した日」で切っていること。新耐震基準そのものの境目は建築確認の日ですから、1981〜1983年あたりの微妙な年代の物件では、両方を確認してください。なお、建築確認済証で分かるのは建築確認を受けた日で、着工日は別の日付です。④の着工日は設計図書・竣工図書で確認します。
構造図は、多くの場合マンションの管理組合が保管しています。マンション標準管理規約は、理事長が設計図書を保管し、組合員や利害関係人から理由を付した書面による請求があったときは閲覧させなければならない、と定めています。購入検討者が直接請求するのは難しいことがあるので、仲介業者から管理会社へ確認してもらうのが現実的です。長期修繕計画や総会議事録も、同じルートで取り寄せられます。
内覧では、天井の点検口の位置、洗面所やトイレの近くにあるパイプスペースの扉、部屋の隅に出ている柱型や天井の梁型を見ておくと、②③の資料と突き合わせやすくなります。写真に撮っておけば、見積もりを頼むときの材料にもなります。
物件そのものの見極め方は中古マンション購入の注意点にまとめてありますので、あわせてお読みください。

リフォーム前提で築年代を選ぶときの考え方
4つの基準が分かると、築年代の見え方が変わります。当社が普段お伝えしている整理は次のとおりです。①④の境目は西暦で決まっているので、築年数ではなく竣工年で区切ってあります(かっこ内の築年数は2026年時点の目安)。
- 2009年ごろ以降の竣工(築17年以下)——①④はほとんど問題になりません。ただし②構造種別は築年数と関係なく効くので、間取りを変えるなら構造図は確認します。設備が比較的新しいぶん、リフォームで得られる伸びしろは小さめです
- 1983年ごろ〜2008年ごろの竣工(築18〜43年前後)——中心は②構造種別と③給排水管の更新時期です。ただし1983年ごろの竣工は旧耐震にあたることがあるので、①だけは建築確認の日で確かめます。加えて、着工が2006年9月1日より前になることが多い帯なので、④の事前調査にかかる費用と工期も見込んでおきます。価格が落ち着き、工事に予算を回しやすい帯でもあります
- 1982年ごろ以前の竣工(築44年以上)——ここに①が加わります。旧耐震(1981年6月1日より前の建築確認)にあたる可能性が高いので、耐震診断・耐震改修の状況、新築工事の着工日、そして管理組合に資料が残っているかまで見ます
大事なのは、「古いからダメ」ではなく「古いほど確認する項目が増える」という捉え方です。確認ができて、その結果を織り込んだ見積もりが取れるのなら、築古を選んで価格が抑えられた分を工事に回す買い方は十分に成立します。
逆に避けたいのは、4つのうち1つでも「分からない」を残したまま話を進めることです。分からない項目は、たいてい工事が始まってから追加費用として出てきます。
確認の順番は①→④ではなく、やりたい工事から逆算するのが早いです。間取りを変えたいなら②が最優先。水回りをまとめて替えたいなら③。壁紙や床の張り替えだけなら、実は4つとも大きくは効きません。

よくある質問
抜けることはあります。壁式構造でも住戸内のすべての壁が建物を支えているわけではなく、間仕切りだけの壁が含まれていることがあります。ただし、どれがどちらかは間取り図では判断できません。構造図を確認したうえで、リフォーム会社や設計者に判断してもらう必要があります。あわせて、工事に管理組合の申請が必要かどうかも管理規約でご確認ください。
金額は建物の状況と工事範囲で大きく変わるため、一律の目安はお示しできません。考え方としては、住戸内の給排水管を交換するかどうか、水回りの位置を動かすかどうかで工事範囲が決まります。長期修繕計画で共用部分の更新予定を確認し、その時期と自分の工事の順番を揃えられるかを、見積もりを取る前にリフォーム会社と相談してください。
そうとは限りません。建材に含まれていても、削ったり壊したりしなければ問題になりにくいものが多く、対象の建材にさわる工事をするときに調査と対策が必要になる、という関係です(露出した吹付け材が傷んでいる場合は別で、そちらは管理組合にご相談いただく事項です)。「やめるか続けるか」ではなく、調査と対策の費用・工期を織り込んだ見積もりを取ったうえで、他の候補と比べるのが現実的だと考えています。
軽くなるのは①だけです。②の構造種別と③の配管は築年数に関係なく残りますし、④は「2006年9月1日より前の着工か」で決まるため、新耐震でも1980年代〜1990年代の建物なら調査の対象に入ります。とくに配管は、1981年以降に建てられた建物でも築30年を超えていれば更新の時期にさしかかります。新耐震であることは、4つのうち1つの答えが出ただけとお考えください。
まとめ——築年数の数字ではなく、4つの基準で候補を見る
- ① 新耐震基準(1981年6月1日以降の建築確認)か。旧耐震なら耐震診断・耐震改修の状況と、住戸内の補強部材の有無
- ② 構造種別。間取りを変えるなら、構造図で抜ける壁を確認する
- ③ 給排水管の更新時期。長期修繕計画で、実施済みか予定かを見る
- ④ 2006年9月1日より前の着工なら、事前調査の費用と工期を見積もりに織り込む
築年数は、この4つを確認する順番を決めるための入口です。数字だけで候補を外す前に、1つずつ当たってみてください。多くは仲介業者を通せば契約前に確認できます。
工事の種類ごとにいくらかかるかは、この記事の特典(リフォーム費用と後悔回避ガイド)に1枚でまとめてありますので、予算を組むときにお使いください。
この記事は制度と一般的な考え方の説明です。耐震診断の有無、給排水管の更新履歴、石綿調査の記録が個々の物件でどうなっているかは、管理会社(管理組合)にご確認ください。工事の可否と費用は、実際の見積もりでご確認ください。




