中古マンションのリフォームで管理組合が絡む5つの制限(2026)
「中古を安く買って、内装は自分好みに全部変える」——中古マンション探しでいちばんよく聞くご希望です。ただ、マンションは他の住戸と一棟の建物を分け合って持っている以上、戸建てのようにすべてが自由にはならず、その線引きは契約前にはなかなか見えません。
中古マンションのリフォームは、専有部分の中なら基本的に自由です。ただし実務では、窓・床・配管・構造・工事の申請という5か所で「思っていた工事ができない」が起きます。共通するのは、自分の部屋の中にも共用部分があるという一点。しかも判断の基準は各マンションの管理規約なので、同じ工事でも物件によって答えが変わります。
- 部屋の中にも共用部分
- つまずく5つの制限
- 契約前に規約を見る
中古マンションのリフォームは「専有部分なら基本自由」——つまずくのは5か所
中古マンションのリフォームの自由度は、工事する場所が専有部分か共用部分かでほぼ決まります。専有部分——ざっくり言えば「自分の住戸の内側」——なら、内装をどう変えるかは基本的に所有者の自由です。
ところが実務では、専有部分の工事のつもりで進めたのに止まる、というつまずきが繰り返し起きます。つまずく先は毎回ほぼ同じで、窓・床・配管・構造・工事の申請の5つ。はじめの4つはいずれも「部屋の中にあるのに専有部分ではない」か、「専有部分だが他の住戸に影響が及ぶ」かのどちらかで、最後の1つは着工前の手続きだからです。
「管理組合の許可がいる」とは何の話か
「管理組合の許可がいる」という言い方には、2つの別々の話が混ざっています。
- 工事内容そのものの可否——その工事を、そのマンションで実施してよいか
- 着工前の手続き——実施してよい工事でも、事前に申請や届出がいるか
できる工事なのに手続きを踏まず止まることも、手続きは正しいのに内容が認められないことも起こります。このあとの5つは、①〜④が工事内容の可否、⑤が手続きの話です。

専有部分と共用部分の境界を先に押さえる
区分所有法は、専有部分を「区分所有権の目的たる建物の部分」、共用部分を「専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物」などと定めるにとどめ(同法2条3項・4項)、住戸の内側の具体的な線引きは各マンションの管理規約が定めています。国土交通省のひな形「マンション標準管理規約(単棟型)」は、住戸の内側を次のように分けています(第7条2項)。
| 部位 | 標準管理規約での扱い |
|---|---|
| 天井・床・壁 | 躯体部分を除いた部分が専有部分 |
| 玄関扉 | 錠と内部塗装部分だけが専有部分 |
| 窓枠・窓ガラス | 専有部分に含まれない |
つまり壁紙や床の仕上げ材は専有部分でも、その裏のコンクリート躯体は共用部分。玄関ドアは鍵と室内側の塗装だけが自分のもので、扉そのものも、窓のサッシとガラスも共用部分です。
バルコニーも共用部分です。ただし標準管理規約は、バルコニー・玄関扉・窓枠・窓ガラス・1階に面する庭・屋上テラスについて、その住戸の区分所有者が専用使用権を持つと定めています(第14条・別表第4)。自分だけが使える共用部分なので、使うのは自由でも作り替えられません。

なぜ制限があるのか——区分所有法と管理規約の役割
マンションは「一棟をみんなで持っている」建物
区分所有法は、区分所有者に対して「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と定めています(同法6条1項)。躯体を削れば建物全体の安全に関わり、床の遮音性能を落とせば階下の生活に直接響きます。自分の住戸だけで完結しない工事があるから、そこにルールが要る——これが制限の出発点です。
管理規約はマンションごとに違う
この記事でいちばんお伝えしたい点です。同じ工事でも、マンションによって可否が変わります。
区分所有法は、建物や敷地の管理・使用に関する区分所有者相互間の事項を規約で定めることができるとしています(同法30条1項)。細部のルールを持つのは法律ではなく、各マンションの管理規約と使用細則です。
しかも国土交通省の標準管理規約は、あくまでひな形です。2025年10月17日にも改正されていますが(改正区分所有法の2026年4月1日施行に合わせたもの)、各マンションの規約が自動で追随するわけではなく、築年の古いマンションでは前のひな形のままの規約が使われていることも珍しくありません。
この記事で紹介する条文は、すべて標準管理規約のものです。検討している物件の規約が同じ内容とは限りません。 判断は必ず、その物件の管理規約・使用細則の現物で確認してください。

中古マンションのリフォームでよくある5つの制限
実務でつまずきやすい5つを、部位の順に4つ並べ、最後に手続きを置きます。
制限① 窓・サッシ・玄関ドアは共用部分——勝手に交換できない
「サッシを入れ替えたい」「玄関ドアを交換したい」。どちらもよくあるご希望ですが、先に見たとおり窓枠・窓ガラス・玄関扉は共用部分です。管理組合が管理するものなので、区分所有者の判断だけで交換することはできません。
ただし、まったく手が付けられないわけではありません。 標準管理規約は、窓枠・窓ガラス・玄関扉などの開口部について、防犯・防音・断熱など住宅の性能向上に資する改良工事は原則として管理組合が計画修繕として実施すると定め、管理組合が速やかに実施できない場合は理事長の書面による承認を受けて区分所有者が自己の責任と負担で実施できるとしています(第22条1項・2項)。
内窓の設置(既存の窓の内側にもう一枚足す方法)が断熱リフォームでよく選ばれるのも、既存サッシに手を加えずに済むぶん話が通りやすいためです。ただし内窓でも規約に定めがあることがあります。

制限② 床材の変更には遮音性能の条件がつく
「カーペットや畳をやめてフローリングにしたい」。中古マンションのリフォームで最も相談が多く、そして最も条件がつきやすい工事です。
床の仕上げ材は専有部分ですが、床材を替えると階下に伝わる音が変わります。国土交通省が標準管理規約コメントの別添2として示す「区分所有者が行う工事に対する制限の考え方」は、床材を張り替える工事を理事会の承認が必要な工事に挙げ、条件を「新築時と同等以上の遮音性能を確認する」としています。
同資料の注記は、新築時カーペット敷きの高経年マンションで床スラブが薄い場合には、管理組合が遮音等級を指定して承認条件とすることも考えられる、としています。規約や使用細則で床材の遮音等級を指定しているマンションは少なくありません。
標準管理規約のコメントは、フローリング工事について「構造、工事の仕様、材料等により影響が異なるので、専門家への確認が必要である」としています。求められる遮音等級はマンションごとに異なり、全国共通の数値はありません。 規約・使用細則の該当箇所を必ず現物で確認してください。

制限③ 水回りの移動は配管の位置と勾配で決まる
「キッチンを対面式にしたい」「浴室の位置を動かしたい」。この希望が通るかは、規約より先に配管の物理的な条件で決まります。排水は勾配で流すので、排水口から共用の縦管(パイプスペース内を通っています)まで下り勾配を確保できる距離しか動かせません。縦管から離れるほど床を上げる必要が出ますし、縦管の位置は建物側で決まっていて動かせません。
配管は専有部分と共用部分の境目そのものでもあります。標準管理規約の別表第2は、給水管については本管から各住戸のメーターを含む部分まで、雑排水管・汚水管については配管の継手と立て管を共用部分としています。住戸内の横引き管は専有部分でも、その先の縦管は共用部分です。
前出の「考え方」でも、給排水管を改修する工事は理事会の承認が必要とされ、条件として高圧洗浄用の掃除口、排水勾配の確保、防音対策、共用の縦管との接続位置を変える場合はその加工の確認、が挙げられています。
- パイプスペースの位置——間取り図に載っています
- 現在の水回りから縦管までの距離
- 床下に勾配を取れる高さがあるか
- 規約・使用細則に水回りの移動の定めがあるか
制限④ 壁の撤去は建物の構造で決まる
「壁を抜いて広いLDKにしたい」。これも構造次第です。
住戸内の壁には、建物を支えている壁と、間仕切りとして立てているだけの壁があります。前者は撤去できません。標準管理規約のコメントは、承認後の現場確認の例として「全面リフォームを行う工事について、壁、床等をはがして耐力壁を撤去しないか、工事対象を確認する」を挙げています。
加えて壁の躯体部分は共用部分です。前出の「考え方」は、躯体コンクリートへの穿孔やアンカーボルト等の打ち込みを伴う工事を理事会の承認が必要な工事に挙げ、区分所有法6条1項の禁止行為の例として建物の主要構造部に影響を及ぼす穿孔・切欠等の工事を挙げています。壁を抜く工事は、この線をまたぎやすい工事です。

制限⑤ 工事には事前の申請・届出がいる
最後は手続きです。標準管理規約17条1項は、専有部分の修繕・模様替え・建物に定着する物件の取付けや取替えのうち、共用部分または他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものは、あらかじめ理事長に申請し、書面による承認を受けなければならないと定めています。申請には設計図・仕様書・工程表の添付が必要で(同条2項)、承認は理事会の決議で決まります(同条3項)。
さらに同条7項は、承認までは要らない工事でも、工事業者の立入り、資機材の搬入、騒音・振動・臭気など工事中の影響を管理組合が事前に把握する必要があるものについて、理事長への事前の届出を求めています。
工事ができる曜日や時間帯は、多くのマンションで使用細則の側にあります。規約本体だけを見て安心せず、使用細則もセットで確認してください。
承認を受けずに工事をした場合、標準管理規約のコメントは、理事長が是正のための勧告・指示・警告や、差止め・排除・原状回復の措置をとることができるとしています。工事後に原状回復となれば、費用も工期も丸ごと失います。

実例——「壁を抜いてLDKを広げたい」はどこまで通るか
5つのうち判断がいちばん分かれるのが④です。構造別に整理します。
壁式構造は「動かせない壁」がある前提で考える
壁式構造は、柱や梁ではなく壁そのもので建物を支える構造で、中低層のマンションで多く採用されてきました。室内に太い柱型・梁型が出ないぶん部屋の隅はすっきりしますが、住戸内の壁の中に、建物を支えている壁(耐力壁)が含まれていることがあります。 この壁は撤去できないので、「間取りを全部フラットにする」計画は最初から成り立たないことがあり、残る壁を前提に考える進め方になります。
ラーメン構造は自由度が高い——ただし配管と共用部分の制約は残る
ラーメン構造は柱と梁で建物を支える構造です。住戸の隅に柱型・梁型が出るかわりに、住戸内の間仕切り壁は構造を支えていないことが多く、間取り変更の自由度は高くなります。スケルトンリノベーション(内装をいったん解体して作り直す方法)が成立しやすいのもこちらです。
ただし自由度が高いのは壁の話だけです。窓・玄関扉は共用部分のまま、排水の勾配とパイプスペースの位置も変わりません。制限①②③⑤は構造にかかわらず残ります。
どの壁が構造を支えているかは間取り図では分かりません。構造図(構造伏図など)で確認する必要があり、判断は建築士やリフォーム会社などの専門家の領域です。この記事の分類は、検討の当たりをつけるためのものとしてお使いください。

契約前に管理規約を確認する方法
5つはいずれも、契約前に確かめる手立てがあります。 その方法をまとめます。
重要事項説明でどこまで分かるか
宅地建物取引業法は、区分所有建物の売買では契約が成立するまでの間に、共用部分に関する規約の定めと専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときはその内容を説明しなければならない、と定めています(同法35条1項6号、同法施行規則16条の2第2号・第3号)。フローリングやペットなど専有部分の利用に関する規約上の制限は、ここで説明される項目です。既存の建物では、設計図書・点検記録その他の建物の建築および維持保全の状況に関する書類のうち国土交通省令で定めるもの(確認済証・検査済証・建物状況調査の報告書など)の保存の状況も対象です(同法35条1項6号の2ロ、同法施行規則16条の2の3)。ただしここに構造図は含まれません。 構造図の有無は、次の方法で確かめます。
ただし重要事項説明は「契約が成立するまでの間」の手続きで、購入するかどうかを決めた後に行われるのが通常です。リフォーム前提で物件を選ぶ方には遅すぎることがあります。

内覧の段階で規約と図面を突き合わせる
規約そのものは、重要事項説明を待たずに確認できます。実務では、売主が保管している規約一式を仲介会社経由で取り寄せてもらうのが最も早い方法です。区分所有法33条2項は、規約を保管する者は利害関係人から請求があったときは正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒んではならないと定めており、国土交通省の標準管理規約コメントは、この「利害関係人」に組合員(=売主)から媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者を挙げています。
構造図も同じで、標準管理規約64条2項は、理事長が設計図書を保管し、組合員または利害関係人から理由を付した書面による請求があったときは閲覧させなければならない、としています。
ただし古いマンションでは構造図が残っていないことがあります。 分譲業者が管理組合に設計図書を交付する義務(マンション管理適正化法103条1項)は、同法の施行日である2001年8月1日より前に建設工事が完了した建物の分譲には適用されないためです。
- 管理規約と使用細則(工事の承認手続き・床材の遮音等級・工事の曜日と時間帯)
- パイプスペースの位置と、水回りからの距離
- 構造図の有無(管理組合または管理会社に確認できます)
- 電気の契約容量——増やす工事を承認対象にしているマンションもあります
リフォーム前提でお探しなら、内覧にリフォーム会社に同行してもらうのが最も確実です。「この壁は抜けそうか」の当たりを、その場で付けてもらえます。
よくある質問
実務では見せてもらえます。売主が保管している規約一式を、仲介会社経由で取り寄せるのが通常の流れです。区分所有法33条2項は、規約を保管する者は利害関係人から請求があったときは正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒んではならないと定めており、国土交通省の標準管理規約コメントは、この「利害関係人」に組合員(=売主)から媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者を挙げています。リフォーム前提でお探しなら、申し込みの前に仲介会社へ「規約と使用細則を見たい」とお伝えください。
2点あります。ひとつはその工事が規約どおりの手続きで行われたか。承認を受けずに行われた工事は、標準管理規約上、理事長が原状回復などの措置をとることができる対象です。もうひとつは入居後に自分で追加の工事をする可能性で、制限そのものが無くなるわけではありません。
マンションによります。標準管理規約17条1項が承認の対象とするのは、共用部分または他の専有部分に影響を与えるおそれのある修繕等です。国土交通省の「考え方」は、電球やシャワーヘッド、水道のパッキン、温水洗浄便座の取替えを、届出も不要な工事の例に挙げています。一方で承認が不要な工事でも、工事業者が出入りする工事や騒音・振動が発生する工事は届出の対象です(同規約17条7項)。壁紙の全室張り替えのように業者が数日出入りする工事は、届出が要ると考えておくのが安全です。
標準管理規約のコメントは、承認を受けずに専有部分の修繕等の工事を行った場合、理事長は是正のために必要な勧告・指示・警告を行うか、その差止め・排除・原状回復のための必要な措置をとることができるとしています。工事費に加えて原状回復の費用も負担することになりかねません。着工前に管理会社または管理組合へ確認してください。
まとめ——5か所を契約前に確かめれば、着工後の想定外は防げる
- リフォームの自由度は「専有部分か共用部分か」で決まる。自分の部屋の中にも共用部分がある
- つまずくのは窓・床・配管・構造・工事の申請の5か所。①〜④は工事内容の可否、⑤は手続きの話
- 判断の基準は各マンションの管理規約と使用細則。標準管理規約はあくまでひな形で、同じ工事でも物件によって答えが変わる
- 規約も構造図の有無も、契約前に確かめられる。内覧の段階でリフォーム会社に同行してもらうのが最も確実
「買ってから調べる」と、直せない前提の部屋を買ってしまうことがあります。5か所を先に確かめておけば、物件選びの段階でリフォーム計画とすり合わせられます。 ご検討の段階でご相談いただければ、規約と図面の取り寄せからご一緒できます。
この記事は制度と一般的なルールの説明です。同じ工事でも可否はマンションごとに異なりますので、実際の工事の可否は、その物件の管理規約・使用細則を確認のうえ、管理会社または管理組合にご確認ください。




